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第 5 章 ピーク設定(Peak タブ)

Peak タブでは、スペクトルに当てはめるピークの本数・関数型・事前分布を設定します。

Peak タブの初期状態。Model search range、Peak Functions、Peak Priors が表示される。

5.1 ピーク本数の探索範囲

Model search range セクションで、ピーク本数の 下限(Min)と上限(Max) を指定します。

  • スライダーは 1 〜 20 までの表示で操作できます。20 以上を指定したい場合は、数値入力フィールドに直接入力すれば適用できます
  • 解析時には Min 〜 Max の各本数について個別にモデルを評価し、ベイズ自由エネルギー が最小のものを最適モデルとして採用します
  • 既に本数が確定している場合は Min = Max とすれば、その本数のみで解析します

重要: Free Energy(自由エネルギー)と Model Posterior Probability(モデル事後確率)は、Intensity parametrization の Height / Area を跨いで比較できません。モデル比較が有効なのは、同一 parametrization を使用した 1 回の run 内だけです。

各セクションのリセットアイコンをクリックすると、現在のデータに基づく既定値に戻せます。


5.2 ピーク関数(Peak Functions)

Peak Functions セクションで、当てはめる基底関数を 複数選択 できます。

関数 数式
Gaussian \(f(x) = A\exp\left(-\frac{(\mu - x)^2}{2\sigma^2}\right)\)
Lorentzian \(f(x) = A\frac{b^2}{b^2 + (x - \mu)^2}\)
pseudo-Voigt \(f(x) = A(1 - \eta)\frac{\sigma^2}{\sigma^2 + (x - \mu)^2} + A\eta\exp\left(-\frac{\ln 2 \cdot (x - \mu)^2}{\sigma^2}\right)\)

注: pseudo-Voigt 式中の \(\sigma\) は半値半幅(HWHM)です。UI の FWHM prior は解析時に \(\sigma = \mathrm{FWHM}/2\) として送信されます。

選択中の関数の数式は、Peak Functions ラベル横の (i) アイコンをクリックするとポップオーバー表示されます。

  • 複数選択すると、関数型とピーク本数の組み合わせが個別に評価されます
  • 最低 1 つは選択必須(最後の 1 つは外せません)
  • pseudo-Voigt を含めると、Mix Ratio (η) のスライダーが Peak Priors の下部に表示されます

Peak Functions で Gaussian と pseudo-Voigt の複数選択チェックボックスを選んだ状態。

5.2.1 Intensity parametrization(Height / Area)

Intensity parametrization では、ピーク強度をどのパラメータで直接推定するかを選びます。

モード 直接推定する強度 pseudo-Voigt の混合比
Height ピーク高さ \(H\) 高さ形式の Gaussian 比率 \(\eta_H\)(export の既存列名は互換性のため MixRatio のまま)
Area 積分面積 \(S\) 面積に対する Gaussian 比率 \(\eta_A\)(export は MixRatio_Area

Area モードでは、Height と FWHM から面積を後計算するのではなく、Area prior として \(S\) の範囲を直接入力します。pseudo-Voigt の \(\eta_A\)\(\eta_H\) とは別の prior として保持されます。Height / Area を切り替えても、それぞれのモードで入力した prior は保持されます。

新しいファイルを読み込んで設定全体がリセットされると、Intensity parametrization の選択は Area から既定の Height に戻ります。


5.3 Peak Priors(事前分布)

Peak Priors セクション。Center / Height / FWHM が色分けされ、pseudo-Voigt 選択時は紫色の η スライダーも表示される。

Peak Priors セクションでは、各ピークパラメータの事前分布範囲を設定します。

パラメータ

パラメータ 説明 単位
Center ピーク中心位置 X 軸の単位
Height Height モードのピーク高さ Y 軸の単位
Area (\(S\)) Area モードの積分面積 X 軸単位 × Y 軸単位
FWHM 半値全幅 X 軸の単位
\(\eta_H\) / \(\eta_A\)(Mix Ratio) pseudo-Voigt のみ。Height モードでは高さ形式、Area モードでは面積形式の Gaussian 成分比率(0=Lorentzian、1=Gaussian) 0〜1

各パラメータは 下限〜上限の範囲 を持ち、スライダーまたは数値入力で調整します。

5.3.1 Prior mode(Shared / Set per peak)

Peak Priors セクション上部の Prior mode セグメントコントロールで、prior の適用方式を選びます。

モード 動作
Shared across peaks セクション上部の Global 設定が全ピークに適用される
Set per peak ピーク本ごとに独立した prior を設定可能

Shared across peaks では、Area モードの \(S\)\(\eta_A\) は Global 設定だけから解決され、切替前に保持されたピーク別の Area 設定は参照されません。一方、Height / Center / FWHM / \(\eta_H\) は既存結果との互換性のため従来の解決順(ピーク別設定があればそれを優先し、なければ Global)を維持します。

Set per peak モードの操作

  1. Prior modeSet per peak に切り替え
  2. 一覧テーブルに既存のピークごとの設定 + Remaining peaks(既定値、Default チップ付き)が表示されます
  3. テーブルの行をクリックして、下の詳細パネルで Center / Height または Area (\(S\)) / FWHM を編集
  4. + Add peak prior ボタンで新しいエントリを作成
  5. 不要なエントリは削除アイコン →「Remove settings」確認ダイアログで削除

Set per peak モードへ切り替えた直後の Peak Priors。ピークごとの prior の一覧と作成ボタンが表示される。

5.3.2 Lock アイコン(Range / Fixed 切替)

Peak Priors / Offset / Noise の各パラメータには、見出し横の Lock アイコンで Range / Fixed を切り替えられます。

  • Range: 下限〜上限の範囲で推定
  • Fixed: 単一の固定値として与え、推定しない

現在のモードは見出し横の Range / Fixed チップで確認できます。Fixed に切り替えるとスライダーの代わりに Fixed Value 入力欄が表示されます。

Lock 切替の対象:

  • Peak: Shared across peaks / Set per peak いずれのモードでも、Center / Height または Area (\(S\)) / FWHM / pseudo-Voigt 時の \(\eta_H\) または \(\eta_A\)(Mix Ratio)
  • Offset: Linear / Shirley の Left / Right、Constant の Constant
  • Noise: Gaussian の \(\sigma\)、Modified Gaussian の \(\sigma_0\) / \(\sigma_1\) / \(\sigma_2\)(Poisson は推定対象外なので Lock 切替なし)
  • Sampling: Lock 切替なし

Set per peak モードで個別ピークを Fixed にできるのは Model search range の Min に含まれる先頭側のピークのみで、それ以外のピークでは Lock アイコンが無効化されます。

5.3.3 Show ranges on plot

Show ranges on plot のトグル(Center / Height または Area / FWHM)を ON にすると、スペクトル上に当該パラメータの prior 範囲が視覚的に表示されます。表示された範囲の端をドラッグすると prior 範囲が更新されます(Shared モードでは Global 範囲、Set per peak モードでは現在編集中のピークの範囲)。Set per peak モードでは、Add peak prior で作成した時点の Global の Show ranges 設定が引き継がれます。


5.4 Area ratio constraints(面積比制約)

Area ratio constraints(折りたたみセクション)では、ピーク間の面積比を制約として与えられます。

例:Fe 2p3/2 : Fe 2p1/2 = 2 : 1 のような既知の分岐比を使いたい場合。

このセクションは、Prior modeSet per peak にし、ピークごとの prior エントリが 2 件以上 ある場合にのみ表示されます(+ Add peak prior で追加できます)。

使い方

  1. セクション右上のチップに「Optional」または「N constraint(s)」と表示されます。クリックして展開
  2. + Add constraint ボタンで制約グループを作成し、Reference Peak(自由に推定するピーク)を選択
  3. + Add dependent peak ボタンで従属ピークの行を追加し、各行で:
  4. Dependent Peak: Reference の ratio 倍に拘束されるピーク
  5. Ratio: 正の実数
  6. Area モードの Optional shape links: FWHM link と、pseudo-Voigt の場合は η_A linkIndependent(既定)または Same as reference から選択
  7. 式バッジは次のように表示されます:
    Area(dependent) = ratio × Area(reference)
    

Area モードの面積比拘束は \(S\) のみに適用される S-only 拘束です。従属ピークでは \(S_{dependent}=ratio\times S_{reference}\) が厳密に適用されますが、FWHM と \(\eta_A\) は既定では独立に推定されます。形状も揃える必要がある場合だけ Optional shape links を Same as reference にします。したがって、面積比を指定しただけでは FWHM / \(\eta_A\) の prior エディタは拘束されません。

Height モードでは、既存結果との互換性のため従来の Height 形式の拘束が使用されます。Area の S-only 拘束と同一のモデルとして扱わないでください。

たとえば Reference Peak を Peak 1、Dependent Peak を Peak 2、Ratio を 2 にすると、Peak 2 の面積は Peak 1 の 2 倍として拘束されます。

Set per peak モードで Area Ratio Constraints セクションも展開した状態。Peak 1 と Peak 2 の制約が表示される。

バリデーション

  • Dependent のピーク番号が Reference 以下の場合 → 赤色エラーアラート
  • 同じピークを複数の制約で Dependent にした場合 → 赤色エラーアラート
  • Dependent を別の制約の Reference にして連鎖させた場合 → 赤色エラーアラート
  • Ratio が 0 以下 → 入力フィールドがエラー状態 + ヘルパーテキスト Must be > 0

一覧テーブルでの表示

Set per peak モードの一覧テーブルでは、Dependent Peak に指定されたピークの行に Constrained チップが表示されます。Area モードでは Area (\(S\)) に Constraint controlled と表示されます。FWHM / \(\eta_A\) は、該当する Optional shape link を Same as reference にした場合だけ拘束対象として表示されます。